【平田明久 様】プロとして花の文化・歴史・管理の方法を自分の中に蓄える~花シェルジュインタビュー

・平田生花店
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・平田明久様

 個人のお客様へのお花のギフト販売や、旅館等での生け込みを得意とする島根県の花店「平田生花店」。インターネット TV(山陰ケーブルビジョン)でインタビューを受けられるなど、花シェルジュとしてご活躍の平田明久様にお話を伺いました。
(2025年2月6日 インタビュアー:花シェルジュ認定講座事務局広報)

ーーー花シェルジュの資格取得者さんは今お店に何名いらっしゃるのでしょうか。

私含めて2名です。

ーーー平田生花店のお店の特徴は。

生け花、それから一般のギフトで花束、アレンジメント、そして鉢物一般を揃えています。アレンジメントには枝物とかを使うことが多いです。生け込み等も得意な人間が多いです。
旅館関係は実際に現地に行き、壺に直接生けたりする事が多いです。

それからうちの店の特徴は、一般のお客さんが非常に多い事です。私自身も花屋さんというのは地域密着型じゃないとまずいと常々思ってますから、彼女・奥さんにあげる花を買いに来られる方、そして夜のお店に届けてほしいとおっしゃる男の人などにオールマイティで何でも対応しております。

ーーー花シェルジュという認定の資格について取得された理由を教えてください。

それは、お客様から植物についていろいろ聞かれるケースがあるからです。

例えば、「もみじの剪定はいつ頃したらいいか」とか、花屋さんとは関係のないようなこともです。本来は植木屋さんや造園屋さんに尋ねる事です。

花屋さんに聞いたら、何でも答えてくれるんじゃないかという感じで聞かれるということもありますし、花全般に関して気軽に尋ねられる方が多いんです。

例えば、水あげの方法とかも昔からの方法で理にかなった方法があるんですが、それを科学的そして論理的にお客様にお伝え出来るようになったのは、やはり花シェルジュを受講したおかげですね。

もちろんそれのみならず文化的なバックグラウンドについても、自分が知っていた以上のことを花シェルジュを受講して得ることができました。知識をまた一般のお客様にお伝えするのが花屋さんの一つの使命でもありますし、そういう姿勢というのは大切だと思っています。

ーーー花シェルジュのカリキュラムのどのような点が科学的なのでしょうか。

例えば、花を水あげするときは「冷たい水につけたらいい」と一般の方は思ってらっしゃるんです。水は加温することによって分子の大きさが変わるという説明を受け、 なるほどなと思いました。水の分子は加温することによって小さくなって、花の道管をくぐりやすいんです。

言ってみたら、お酒が冷酒だと分子が大きいので、表面張力で盛り上がります。だけど加温酒は、例えばテーブルの上にこぼしたとき、ばーっと広がって表面張力は働きません。

他にも、花を挿して1回使って乾いてしまったスポンジですね。いくら水をかけても水を吸いません。だけどお湯をかけるとお湯を吸うんです。やはり分子が小さくなってるから、スポンジが吸収する。

そういうことを一般の方にもお伝えすると「なるほどね」と思っていただける。やっぱり興味を持っていただける。

このような科学的な説明が面白かったな、と私は思います。

また、洗剤を水に混ぜると界面活性して水の分子が小さくなり、切り花が吸収しやすくなることも科学的な説明で面白いと感じたところです。

ーーー花シェルジュを受講してどのようなお店の変化がありますか。

我々が学んだことを、現場で仕事してるスタッフたちにも伝えました。水あげをどういうふうにしたらいいかなど、結局お客様が切り花を買って、いかにお得感を感じるか。それって大きなポイントだと思うんです。お店への信頼にもつながります。

私は、どれだけ花をお客さんの手元で保たせられるか、それが非常に大切な要素じゃないかなと思いますし、それをお店のスタッフたちにも折あるごとに伝えるようにしております。

 自分で体験して得た知識は、その人個人の財産になります。私も、学んだことをお店の中で話したりはするんですけれども、それを今度は彼らに自分のものとして使ってほしいんです。勉強とは自発的にするものでもあると思うので。

ーーーこれから花シェルジュの受講を考えられている方にメッセージはありますか。

ただ単に花を売り買いするだけではなくて、花というものは一つの文化だと思うんです。文化を語るにはやはり花の歴史のことも知らないといけないし、花の管理の仕方も知らないといけない。そういったことがベースになると思うんです。ただ単に花の色合わせとかデザインだけじゃないと思うんです。

本当に生き残るには、本当にプロとしてやっていくには、 そういった表に出ない部分もしっかりと自分の中に蓄えておく必要があると思います。

例えば、お盆・お彼岸の時の花にもいろいろいわれがあると思いますが、 まだ私が若い時にね、市場で女郎花(おみなえし)を競る時に「メシ」と言うんです。何のことかなと思ったら、女郎花の花が亡くなった方のご飯なんですよね。人間のご飯の代わりに亡くなられた方のご飯が「メシ」ということなんです。だから女郎花は、お盆や秋の彼岸にお供えするんですよ。

お盆だったら、みそはぎ。みそはぎは水ですし、ほおずきは「あなたの来るところはこちらですよ」という案内をする提灯です。だからほおずきをお墓に建てると、ご先祖様が間違いなく迷わずにいらっしゃる。それからお榊とか松とか、神棚にお供えしますよね。神様が「常緑」のところにいらっしゃるということです。だから門松も、新年にご先祖様がいらっしゃるように、という目印なのです。 

花の文化については、いろいろなエッセンスがあります。花シェルジを受講すると、そういったことが少しずつわかってきます。これは大きな要素です。

松江の場合、江戸時代の殿様の影響だと思うんですけど、花というものが一つの文化になっています。茶人であった殿様が茶道を広め、併せて茶花も広まりました。また明治になると、生け花において松江出身の小原流の始祖が盛り花を広めるようになりました。つまり、茶道、華道がバックグラウンドにあるんです。

お客様も世代がどんどん変わりますけど、本当に好きな方は自分で花屋さん以上に勉強しますし、本当にセミプロみたいな人もいらっしゃるわけで、そういう方と対等にお話をするには、花シェルジュを受講することは、すごくプラスになると思います。

いわゆる表面的なものだけでなく、花について広く学んでいただくと、より一層花文化が広がり、我々花屋が花を通してみんなが豊かな気持ちになれる社会づくりのお手伝いを出来るようになりますよ。

皆さん、花シェルジュを受講して、人々が豊かな気持ちになれるお手伝いをしましょう!